生命保険の契約転換制度
生命保険の「下取り」とは、正式には、「転換」といいます。
定期付終身保険に加入した定期保険特約の更新時を迎えると、必ずといっていいほど営業職員は、契約転換を勧めます。
しかし、難しい仕組みであるため、誤解が生じ、トラブルが多く発生しています。
生命保険業界での「下取り」や「転換」とはどういう意味なのかご説明します。
【生命保険の契約転換制度のしくみ】
契約転換制度とは、既契約の転換価格(解約返戻金や積立配当金など)を、新たに加入する保険の保険料の一部に充当し、
既契約から新規契約に乗り換えるものをいいます。
つまり、これが生命保険の「下取り」です。
定期付終身保険の転換では、保障額は大型化したけれど、終身保険が減額されたなどのトラブルが見受けられます。
【転換の種類は3種類】
- 基本転換・・・・・転換価格を終身保険のみに充当する方式です。終身保険の保険料だけが軽減されます。
- 定特転換・・・・・転換価格を定期保険特約のみに充当する方式です。保険料負担が軽減されるのは定期保険特約のみです。また、特約更新時の保険料負担は軽減されません。
- 比例転換・・・・・転換価格を一定の割合で分割し、終身保険と定期保険特約のそれぞれに充当する方式です。終身保険、定期保険特約それぞれについて、保険料負担が軽減されます。特約更新時の保険料負担が軽減されるのは終身保険のみです。
生命保険の転換は自動車の下取りとは意味が違います
【自動車の下取り】
自動車の場合は、現在使用している車をディーラーに渡して、その車の価格と新車の価格の差額をローンなどで支払って、乗り換えることを「下取り」といいます。
使っていた車は年式(新車から何年経過したか)や程度(実際の価値・事故の有無)などによって査定価格が決定されます。
欲しい新車との差額を支払えば(ローンでもいいけど)、新車のハンドルを握ることができます。
【生命保険の下取り(転換)】
生命保険の場合は、どうでしょうか?
まず、生命保険が自動車と一番違うところは、
自動車は経過年数とともに(たとえ車が未使用であっても)価値が減少していきます。
これに対して、生命保険の場合、
死亡保障1,000万円で契約した保険であれば、加入から年数が経ったからといって、契約した死亡保障の保険金1,000万円という額面価値が
800万円や700万円に低下することはありません。
つまり、自動車のように、「かたち」があって、時間の経過とともに価値が減少していくものと、一番違うところです。
では、なぜ生命保険会社は、
「新しい保険にしましょう!!」
と言って、必死に「転換」を勧めてくるのでしょうか?
【生命保険会社が下取りを勧める理由】
既契約の保険の契約を取り替えさせられる時、
「予定利率が低い保険に取り替えられますので、、、」
と説明を受けた契約者がいるでしょうか?
生命保険の転換とは、現在加入している契約の保険を、形式上、解約して、その解約返戻金を次の新しい契約の保険料の一部に充当する、というものです。
その時の解約返戻金は、本来は契約者に支払われるべきお金ですが、生命保険会社はそのお金を契約者には1円も戻さずに、次の保険の保険料として取り込んでしまうわけです。
《〜バブル時代〜》
橋本内閣が、「総量規制」をしてバブルがはじけるまでの間、日本はかつてない好景気に沸きました。
日本全体が狂乱時代でした
金利は右肩上がりで上昇し、株も土地も上昇でした。
生命保険業界も例外ではなく、集めた保険料は高い利率で運用できるとして、予定利率も最高は6.25%という、想像できない高利率で保険は販売されました。
(写真はバブル時代のイメージです)
バブルがはじけると、高利率の契約をたくさん抱えた生保の大会社は、景気と経済の低迷で約束した利率が稼げず、不足分は自社で補填しなければならなくなりました。
これを「逆ザヤ」といいます。
《「逆ザヤ」を解消する方法》
@高利率時代の契約を止めさせてしまう(解約して契約をなくしてしまう)
A低い利率の現状に合った契約に取り替えさせる
の二つです。
低い利率の現状に合った契約に取り替えさせる がいわゆる 「転換」と呼ばれるものです。
@契約を止めてしまうと、会社は「保有契約件数が減ってしまう」ので好ましくありません。
A転換させれば、「予定利率の低い保険にさせられる」というメリットがあり、保有契約件数には影響しません。さらには、継続して保険料を徴収することができます。
つまり、生命保険の「転換」は、保険会社にとっては一石二鳥なわけです。
契約者の損失は度外視です。
生保営業マンがやってきて、「保険の下取りをしましょう!」と、
言われて、
「新しい保険になった、だから、内容もきっと最新なんだろう」と
安心していたら、、、それは大間違いです。
生命保険は、新しいとか古いとかで良し悪しは決まりません。
転換制度によるトラブル
【トラブル例】
- 定期付終身保険を増額、保険料はほぼ同額、ところが、終身保険が大幅に減額された
- 払込期間が延長された、定期特約が更新型になっていた
《転換前》
男性30歳
終身保険500万円
60歳払込満了
定期特約1,500万円
10年更新型
口座振替月払9,970円
《転換後》
男性40歳
終身保険150万円
70歳払込満了
定期特約2,850万円
10年更新型
口座振替月払13,645円
「解約返戻金」を老後の資金にしよう!と、考える契約者は少なくありません。
多少、保障額が増えたとしても、解約返戻金のもとになる終身保険が減額されれば、意味がありません。
しかも、転換後の予定利率が低ければなおさらのことです。
生命保険では、保障額が同じでも予定利率が高ければ保険料は安くなります。
契約転換の場合、保険料は現在の予定利率が適用されますが、改定により、予定利率の引き下げのため、
結果、契約の転換は予定利率の低下を招きます。
つまり、契約者にとってみれば、有利な契約から不利な契約への変更です。
契約者が後でこれに気づいて、トラブルになるわけです。
トラブルの原因は、転換制度のしくみについて、生保営業マンの説明不足による場合も少なくありません。
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