ガン保険の加入率のアップ
ガン保険の加入率のアップ
ガン保険の保障内容が多様化しています。
これまで主流だった入院・手術費用などの給付のほか、通院しながらの抗がん剤治療などを主契約にすえた商品も登場しています。治療法の多様化に対応した動きと見られます。
ガン保険に関心を持つ人が増えてきており、加入の相談も多くなっています。
保険ショップの「ほけん百花」(71店舗)の7月〜9月のガン保険契約は、前年同月比81%増になり、10月は2倍に伸びました。
胆管ガンで2015年9月に亡くなった女優の川島なお美さん、乳がんで闘病中のタレント北斗晶さんらが注目された影響で、女性の加入が目立っています。
今や日本人の2人に1人がかかわると言われているガン。生命保険文化センターの調査(2013年度)では、ガン保険加入率は平均37%(男性40%、女性35%)。2001年度の同21%に比べて16ポイント増えています。
《ガン保険の主契約の内容》
- ガンと診断された際に受け取れる診断一時金
- 入院日数に応じて一定額が出る入院給付金
- 手術に出る手術給付金
の、基本給付を主契約とした商品が多いです。
そして、これらでカバーされない通院の給付や、公的医療保険の対象外のものもある抗がん剤治療、放射線治療などに対する給付は、特約で付加することができます。
入院よりも通院が増加|通院治療法に対応できる保険
通院治療法に対応できるガン保険
従来、ガンの治療といえば、入院して手術し、症状が良くなると退院するというのが一般的でした。
しかし、最近では、「入院せず放射線治療を受ける」、「入院前や退院後、通院で抗がん剤治療を行う」といったケースも増えてきています。
厚生労働省の患者調査でも、人口10万人あたりのガンの「受療率」は、2002年(10月中の一時点)では入院109人に対して通院94人だったのに対して、2011年は入院107人に対し通院130人と、通院が逆転しました。
このため、入院を前提にしたガン保険だと、通院治療に合わないケースも出てきます。
生命保険各社は、通院や様々な治療法に対応できる商品を売り出しています。
東京海上日動あんしん生命保険が7月から販売を開始した「がん診断保険R」は、診断一時金のみで契約ができます。
診断一時金は用途を選ばないので、治療の費用や生活費などに幅広く使うことができます。70歳時点でガンにならなければ、それまでに支払った保険料(主契約分)が全額戻ってくるのも特徴です。
AIG富士生命保険が昨年7月から販売している「がんベスト・ゴールドα」も、診断一時金を主契約とした保険です。
特約で初回診断時の給付をさらに手厚くすることも可能です。
チューリッヒ生命の「終身ガン治療保険プレミアム」は、入院の他、通院治療も主契約でカバーすることができます。
抗がん剤や放射線治療をメインで保障し、診断一時金などは特約で付けます。
保障内容と保険料のバランスを考えて、可能であれば通院治療に対応した保障も検討してみてはいかがでしょうか?
(読売新聞より抜粋2015.11.14)
【通院治療にも対応できるガン保険の例】
東京海上日動あんしん生命 |
AIFG富士生命 |
チューリッヒ生命 |
|
---|---|---|---|
給付内容例(主契約) | 診断一時金100万円 | 診断一時金100万円 | 抗がん剤・ホルモン剤治療、放射線治療に各20万円/月 |
給付内容例(特約) |
抗がん剤治療に月額 |
初回診断時に100万円 |
診断一時金100万円 |
月払い保険料 |
男性:3,968円 |
男性:3,447円 |
男性:3,860円 |
保険期間・保険料払込期間は終身。診断一時金はいずれも回数無制限(2年に1回を限度)。保険料は保障内容により異なります。
短期入院、通院治療に対応する新しいタイプの医療保険
日帰りや1泊入院でも一時金あり
入院日数の短期化や通院治療に対応する新しいタイプの医療保険が登場しています。
日帰りや1泊など短い入院でも一時金を受け取れたり、薬剤治療の費用を保障したりします。保障が手厚いため、保険料が割高になる場合もあります。
公的な保険制度もあるなかで、どういう人に向いているのでしょうか?
医療保険は病気やケガなど万一の場合に必要になる大金の支出に備えるものです。
公的な医療保険制度には、払った医療費が高額になったとき、自己負担額が一定限度までで済む「高額療養費制度」があります。
70歳未満の現役世代の医療費の窓口負担は3割ですが、高額の場合は一定額を払い戻す仕組みです。
例えば、医療費が月100万円かかった場合、3割の30万円を窓口でいったん払います。年収370万円〜770万円なら約21万円が健康保険から払い戻してもらえますので、自己負担は約9万円で済みます。
公的制度を補完する民間の医療保険でも新たなタイプが登場しています。
厚生労働省の2017年調査によると平均入院日数は29.3日と、20年間で約10日短くなりました。日数別の分布をみますと10日以内に退院する患者が6割を占めています。
脳内出血やくも膜下出血など脳血管疾患の入院日数は80日近いですが、心疾患やガンは20日弱です。
入院1日あたりの医療費が高くなる傾向があることもあって、短期入院保障を販売する保険会社が増えています。
医療保険は入院したら1日5千円や1日1万円などの給付金を払う「日額タイプ」が多いです。
日本生命保険が2019年4月に発売した「入院総合保険NEW in 1(ニュウインワン)」は、日帰り入院からでもまとまった一時金が受け取れます。
同社がこれまで販売してきた医療保険は入院日額1万円、手術給付金20万円が基本でした。同じ保険料で入院1日から30万円の一時金を支払うようにしました。
明治安田生命保険の「50歳からの終身医療保険」はその名の通り、50歳から90歳まで契約できるシニア向けの保険です。
入院1日から10万円のまとまった給付金を受け取ることができます。入院や手術などがなく健康に過ごせれば、5年ごとに5万円のキャッシュバックがあります。
三井住友海上あいおい生命保険が2018年4月に発売した「&LIFE 新医療保険Aプレミア」は日帰り入院でも5日分の給付金を受け取れるのが基本で、特則を付加すると10日分に増えます。
ただし、日帰りで入院しても5日分を支払うので、保険料は高くなります。保険料は保障内容がシンプルな「日額タイプ」の方が月数100円程度安くなります。
保険料は年齢や健康状態によって異なります。保障内容や保険料を見極めて選ぶ必要があります。
主な医療保険の商品の特徴
社名「商品名」 | ポイント | |
---|---|---|
入院短期化に対応 |
日本生命「NEW in 1」 | 日帰り入院から一時金を給付 |
同上 |
三井住友海上あいおい生命 |
日帰り入院から5日分、特則を付けると10日分を給付 |
同上 |
明治安田生命 |
日帰り入院から10万円 |
通院治療を重視 |
メディケア生命 |
9疾病の治療薬約1,400品目に対応。 |
9つの疾病保障
医療保険は入院や手術を保障するものが多く、通院による薬剤治療には対応しきれていませんでした。
メディケア生命保険は、2019年5月、薬剤による治療を保障する保険「メディフィットEX」の販売を始めました。
がん、心疾患、脳血管疾患の3大疾病のほか、動脈・静脈疾患、糖尿病など9つの疾病を対象とします。入院や手術をしているかは問いません。
抗がん剤など、対象の1,400品目の薬剤治療を受けた月には10万円か5万円を受け取れます。がんの治療に特化したがん保険なら保険料も抑えることができます。
チューリッヒ生命保険には、がんの診断一時金や手術給付金をオプションにし、抗がん剤などの治療をメインにした商品があります。
基本的に自己負担額にあてる貯蓄があれば民間の医療保険は不要ですが、公的な制度と貯蓄で賄えない場合には医療保険を検討する必要があります。
例えば、住宅ローンを抱えた子育て世帯などでは一考に値します。
住宅ローンの返済や教育費などで資金需要が大きく、日頃計画的に貯蓄をしていても病気による突然の出費に対応できない場合もあります。
全般的に病気のリスクが高まる高齢層では保険による安心を加えたい人も少なくないでしょう。
入院すると医療費以外に差額ベッド代や見舞いの家族の交通費、身の回り品代などの自己負担額もかさみます。
保険会社の競争が激しく、新たな商品の投入も多い医療保険の中から自分のニーズに応じて必要な保障を見極めるためにも、ファイナンシャルプランナーに相談するようにしましょう。
(日本経済新聞より抜粋2019.6.22)