被保険者と受取人が同時に死亡した場合の保険金の相続関係
被保険者と受取人が同時に死亡した場合の保険金の相続関係
被保険者と受取人が同時に死亡した場合の保険金の相続関係は?
契約者であり、被保険者である父と、受取人である子どもが事故等により同時に死亡した場合、保険金の相続関係はどうなるのでしょうか?
契約者(保険料負担者) | 父 |
---|---|
被保険者 | 父 |
保険金受取人 | 子 |
被保険者と受取人が同時に死亡した場合の保険金の相続関係
被保険者と受取人が同時に死亡した場合の保険金の相続関係
保険金受取人の相続人がその保険金を相続することになります。
法律上の「同時死亡の推定」に関する規定については、その要件として必ずしも共同の危難によることを要求してはいません。
したがって、この設問のように確実に同時死亡したと考えられる場合に限らず、死亡の先後が不明というケースであっても、「同時死亡」としての取扱は推定されるものとされています。
同時死亡が生じた場合に相続税ではどう考えるのか、という点についての明文規定はありません。
しかしながら、そもそも相続人としての立場は被相続人の相続開始時における相続人の生存を前提としていますので、同時に死亡したということは被相続人が死亡したときには、その相続人はいなかったということであり、被相続人と相続人とはお互いに相続しない、つまり相続関係は生じないということになります。
生命保険契約においては、保険契約の受取人が保険事故発生前に死亡した場合には契約者は受取人をあらためて定めることができますが、再指定をする前にその契約者が死亡した場合は、受取人の相続人がその保険契約の受取人になるとされています(旧商法676A、保険法46)。
ただし、受取人の相続人である者が同時に死亡している場合には、この者は相続人から除かれるとされています。
この設問のケースでは、契約者と受取人が同時に死亡しており、受取人の再指定は事実上不可能です。
受取人の相続人がその保険金を相続することになります。この場合の保険金の相続割合については、判例等により、「均等分割割合」が相当とされているようです。
なお、生命保険会社で約款上に保険金の受取人や受取割合を規定している場合には、約款上の定めに従うことになります。
実務のポイント・・・生命保険金の非課税枠の適用に注意
上記の設問例のような場合における、いわゆる「生命保険金の非課税枠」の適用について、間違った解釈をしがちです。
考え方の基本は、この非課税枠の適用の対象者は「相続人が取得した生命保険金に限られる」という点にあります。
妻と母が受け取った保険金は父の死亡に伴うもの、すなわち父の相続にかかる「みなし相続財産」です。
したがって、妻は子どもの相続人として保険金を受け取ってはいますが、父の相続人ではないため、この非課税枠の適用は受けられず、母のみが非課税枠の適用を受けることができます。
受取人が被保険者よりも先に死亡している場合の保険金受取人
受取人が被保険者よりも先に死亡している場合の保険金受取人
受取人が被保険者よりも先に死亡している場合の保険金受取人は誰?
私の父は、父自身を契約者および被保険者とし、受取人を妻(私の母)とする生命保険に加入していました。
ところが、先日受取人である母が急病で亡くなりました。
このような場合には、保険金の受取人は誰になるのでしょうか?
契約者(保険料負担者) | 父 |
---|---|
被保険者 | 父 |
保険金受取人 | 母 |
受取人が被保険者よりも先に死亡している場合の保険金受取人
受取人が被保険者よりも先に死亡している場合の保険金受取人
この設問のケースでは、保険金の受取人である母親が死亡し、その後、契約者かつ被保険者である父親が受取人の再指定をすれば何ら課税関係は生じません。
しかし、父親が再指定をせずに亡くなると、契約上の受取人である母親の相続人がその保険金の受取人となることになります。
保険法では、保険事故発生前(被保険者の死亡前)にその保険契約にかかる受取人が死亡した場合には、契約者が保険金の受取人を再指定できることとしています。
さらに契約者が受取人の再指定をする前に死亡した場合には、保険金受取人の相続人がその契約にかかる保険金の受取人になることを定めています。
一般的に、保険金の受取人を法定相続人とした場合、いつの時点の法定相続人を指すのでしょうか?これは保険金受取人の死亡によって当初の契約者の受取人指定の効力がどこまで及ぶのか、という学問的解釈によって考え方が分かれています。
学説や最近の判例等では、契約者が受取人の再指定をせずに死亡した場合には、指定受取人の相続人としての権利はその受取人の死亡時に確定するとし、受取人死亡時のその受取人の法定相続人がその保険金の受取人になるとする説が多いようです。
この場合に、受取人の相続人として被保険者である父が入る場合と入らない場合があり、約款の定めによることになります。
被保険者である父が相続人に入る場合は、その父が死亡していますので、父の法定相続人と母の法定相続人の両方が死亡保険金の受取人となります。
相続人に入らない場合は、母の法定相続人が死亡保険金の受取人になり、相違が生じますので注意が必要です。
保険金の相続割合については、通常「均等分割割合」とされているようです。
設問の場合には、契約者である父親は早急に受取人の再指定手続きを行うべきでしょう。
この手続きをしないまま被保険者でもある父親が亡くなった場合には、保険金の受取人は相続人となりますが、相続人が複数いる場合にはトラブル発生の原因ともなりますので、事前にきちんとした対応をしておくべきでしょう。