養老保険で福利厚生プランの税務上の注意点※会社契約で損金算入
養老保険で福利厚生プランの税務上の注意点
養老保険で福利厚生プランの税務上の取り扱いと注意点は?
当社では、役員・従業員の福利厚生を充実させるために、会社契約で生命保険に加入しようと考えています。
ファイナンシャルプランナーに相談したところ、会社を満期保険金受取人、被保険者の遺族を死亡保険受取人とする養老保険を提案されました。
この生命保険に加入するときに、注意すべき点はありますか?
契約者 | 会社 |
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被保険者 | 役員・従業員全員 |
保険金受取人 | 満期保険金=会社 死亡保険金=被保険者の遺族 |
保険の種類 | 養老保険(福利厚生プラン) |
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養老保険で福利厚生プランの税務上の注意点
養老保険で福利厚生プランの税務上の取り扱いと注意点
福利厚生を目的として加入することを前提に、注意すべき点がいくつかあります。
このような契約形態で加入する養老保険は、福利厚生プランと呼ばれ、幅広く普及しております。
福利厚生プランの場合、役員・従業員の全員が加入することが原則です。ただ、全員が加入しなければ、保険料の2分の1を損金に算入できないということではありません。
つまり、損金に算入できるかどうかについて判断が介入することになるということです。
実際に、どのような場合に損金に算入できるかは、ケース・バイ・ケースで判断されることになります。以下、注意すべき点を項目ごとに記載致します。
税務当局は、保険料の2分の1を福利厚生費として損金算入する要件として、特に契約の継続性を重視しているといわれています。早期の解約・払い済み保険への変更に対しては厳しくチェックされる可能性は高いです。
何年くらい経過すれば、早期解約とみなされないかに関しての明確な定めはありませんが、おおむね3年程度が実務上の目安になると考えられます。
福利厚生プランは全員加入が原則です。
ただし、勤続年数等の客観的な基準によって対象等を限定することは可能です。
たとえば、勤続3年以上の全員を加入させるようにするということです。ただし、あくまでも合理的な基準に基づいて、普遍的に加入することが必要です。そして、その基準は社内規程等によって明確にしておくべきでしょう。この普遍的加入ということについても、明確な規定はありません。
実務上は、全社員の7割〜8割程度をカバーする必要があると考えられます。たとえば、「課長以上」とか「男子のみ」というような基準は、非合理的である(福利厚生の趣旨に反する)とみなされる可能性が高いです。
保険金額についても、勤続年数や年齢等の客観的な基準によって差をつけることは可能ですが、あくまでも合理的な基準に基づくものであり、かつ、社内規程によって明確にしておくべきでしょう。
役員・従業員の大部分が同族関係者である場合、同族関係者の保険料の2分の1は福利厚生費ではなく給与課税されますので注意が必要です。
なお、役員給与とされる場合には、臨時的給与とみなされて、損金不算入とされますので留意して下さい。この「大部分」の判断基準についても明確な規定はありません。
実務上は、同族関係者が役員・従業員の約80%以上を占める場合が該当すると解釈されています。また、加入にあたって複数の保険会社に加入を区分していた場合であっても、養老保険としての加入が公平である場合には問題ないと考えられます
養老保険で福利厚生プラン実務のポイントは?
養老保険で福利厚生プランの定期的に契約内容の確認をすること
期間が経過すると従業員の入退社や勤続年数の変化等により、契約内容が上記の条件を満たさなくなっている場合も多く見られます。
そのまま放置した場合、税務調査のときに否認され、福利厚生費(経費)として認められないなどの問題となる可能性もあります。
福利厚生プランを採用した場合には、定期的に契約内容を確認する必要があります。
養老保険で福利厚生プランの税務上の注意点と税務調査
養老保険で福利厚生プランの税務上の注意点
養老保険で福利厚生プランの税務上の取り扱いと注意点は?
当社では、役員・従業員の福利厚生を充実させるために、会社契約でA社の生命保険に加入することにしました。
役員・従業員一律1,000万円の養老保険に加入しようとしたところ、従業員の中にすでに自分でA社の保険に加入している者がおり、限度額の関係で加入できないことが判明しました。
加入できない者については契約をせずに、このまま契約の手続きを進めても、税務上問題はないのでしょうか?
契約者 | 会社 |
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被保険者 | 役員・従業員 |
保険金受取人 | 満期保険金=会社 死亡保険金=被保険者の遺族 |
保険の種類 | 養老保険(福利厚生プラン) |
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養老保険で福利厚生プランの税務上の注意点
養老保険で福利厚生プランの税務上の取り扱いと注意点
ケースに応じて以下のように取扱います。
このケースは、一部の者のみにつきA社以外の生命保険会社の養老保険に加入しても差し支えないものと判断します。
ただし、加入できない者について未加入のままにしておくと、普遍的加入の面で問題が生じる可能性があります。
保険料の2分の1を福利厚生費として損金算入するためには、原則として普遍的加入が求められますが、設問の場合のように、会社が普遍的に加入させたいと考えていても、加入限度額を超えてしまう等の事情により、加入させられないケースはよくあるものと考えられます。
このように、普遍的加入をさせたくても、加入させられないケースについてどのように対処するかをまとめると以下のようになります。
税法では、保険料の2分の1を福利厚生費として損金算入するための要件として、生命保険等への普遍的加入を会社に対して要求しています。
しかし、同じ生命保険会社の保険に加入しなければならないことまでは求めていません。
したがって、加入限度額等の理由により、当該会社の保険に加入できない従業員がいるのであれば、その者に対して、他の生命保険会社の養老保険に加入させれば、普遍的加入であると扱うことができるものと考えられます。
この場合、両社の養老保険の保障の内容が多少異なっていたとしても、やむをえず異なってしまう程度であれば、差し支えありません。
なお、養老保険への加入を全くさせない場合には、普遍的加入とはいえない、とされるものと考えられます。
会社側は加入させたいと考えていても、被保険者の病気等により、加入できない場合に、この一人のために普遍的加入でないといわれ、保険料の2分の1を福利厚生費として損金算入できない、というのは不合理です。
このような場合は、会社側に非があるわけではありません。その者について加入させていない場合であっても、他の加入者についての損金算入に問題はありません。
ただし、税務調査等の際にトラブルを生じさせないために、生命保険加入ができなかった経過を書類として残しておくべきです。
また、加入にあたっての条件が解消された場合については、すみやかに加入させることも忘れてはなりません。
会社側は加入させたいと考えていても、本人が保険が嫌いでどうしても加入したくないという場合も、病気等により加入できなかった場合と同様に他の加入者についての損金算入は可能です。
ただし、税務調査等の際にトラブルを生じさせないための資料として、加入にあたっての経過に加えて、本人が加入を希望しなかった旨の確認書を作成しておくといいでしょう。
また、本人がその後、加入を希望した場合、すみやかに加入させることが必要です。