掛け捨てと貯蓄性とどちらがいい?違いは?
掛け捨てと貯蓄性と違いは?
掛け捨ての保険|更新型は注意
掛け捨ての保険か、それとも貯蓄性のある保険にすべきか?生命保険を選ぶときに、迷う項目の一つです。
掛け捨て保険の代表である定期保険を例に見てみましょう。
「ある一定の期間を保障してもらったわけだから、保障が終わったらゼロになってもしかたない」と考える人も多いです。
今でも、そう思っている人は少なくないでしょう。
確かに、少ないお金(少額の保険料)で比較的大きな死亡保障を求めようとすれば、定期保険はその目的をかなえる保険であることは間違いありません。
でも、間違いないからといって、この定期保険で全てのニーズを満たそうとするのは間違いです。物事には適材適所というルールがありますから、どんな場面でも定期保険で事足りるという訳にはいきません。
今、年齢30歳の男性が、一生涯の死亡保障を定期保険で得ようと考えたとき、保険料はどうなるか計算してみましょう。
一生涯といっても何歳まで保険料を支払うのか線引きが必要ですが、平均寿命の79歳までと、平均寿命に平均余命を足した保険計算上の安全圏の88歳までと、それぞれ保険料を支払う合計額を計算してみます。
満期になってしまえば保障は終わり、全てがゼロになってしまうわけですが、保険金1,000万円のために支払う保険料は約750万円で済みます。
ところが、生命保険会社は、88歳満期というような満期の長い保険を売っていたのでは、加入者にはトクでも生保会社にとっては儲けが薄いのです。
なので、法人向けの経営者保険でなければ、一般の人にこんな長期の保険を販売したりはしません。
そこで、保険会社はどうすると思いますか?答えは簡単です。保険を安く見せかけて販売するのです。
生命保険営業マンは保険を安く見せかけて販売
性別・年齢 | 男性・30歳 |
---|---|
保険種類・満期 | 定期保険・88歳満期 |
保険金 | 1,000万円 |
月払保険料 |
合計保険料(平均寿命79歳まで) |
---|---|
10,790円 |
6,344,520円 |
月払保険料 |
合計保険料(保険計算上の安全圏88歳まで) |
---|---|
10,790円 |
7,509,840円 |
※保険計算上の安全圏とは、平均寿命に平均余命を足したものです。
性別・年齢 | 男性・30歳 |
---|---|
保険種類・満期 | 定期保険・15年ごと更新 |
保険金 | 1,000万円 |
月払保険料 |
合計保険料(平均寿命79歳まで) |
---|---|
30歳〜45歳:2,600円 |
468,000円 |
45歳〜60歳:5,580円 |
1,004,400円 |
60歳〜75歳:16,760円 |
3,016,800円 |
75歳〜79歳:67,160円 |
3,223,680円 |
合計 |
@7,712,880円 |
月払保険料 |
合計保険料(保険計算上の安全圏88歳まで) |
---|---|
79歳〜88歳:67,160円 |
A7,253,280円 |
総合計支払保険料 |
@+A=14,966,160円 |
掛け捨ての保険料の安さに騙されてはいけない
【A】と【B】の保険の保険料表を比較してみますと、スタート時点は断然【B】保険の方が安いです。
漢字系生命保険会社は、「10年更新」とか「15年更新」などと言って、【B】のように当初の保険料が安い保険を適用します。
そして、「更新ごとに保険料を上げていく」方式を採用しているのです。
結局、【B】のような「更新型」の保険に加入すると、更新のごとに保険料がつり上がっていくのをガマンして払うことになります。
しかし、財布がガマンしきれなくなったら、保障額を渋々下げて、保険料を少なくするしかないのです。
生保レディさんは、そういう事態について質問すると、間違いなく「保障を見直せばいいのではないですか?」の一言で片付けてしまいます。
そうした保険営業マンにとっては、生命保険とは、顧客の家族の幸福を守る手段ではなく、自分の成績を守る単なる商品の販売でしかないのです。
ガマンして保険料を支払い続ければ、1,000万円の保障のために1,000万円以上の保険料を支払うことになりかねないのです。
更新型保険の怖いところはここにあります。掛け捨ての定期保険には、もっと大きな欠点もあります。
それは、定期保険は一般的に掛け捨て保険なので、原則的には契約を解除しても、解約返戻金はありません。
解約返戻金がない保険では、もし保険料を何らかの事情で滞納した場合、保険料の支払い猶予期間(月払保険では2ヶ月)を過ぎてしまうと、保険が簡単に失効してしまいます。
ちなみに、契約した保険は失効させないようにすることが大切ですが、もし、失効させてしまった保険を元の契約に復活させるには、滞納していた期間の保険料全額の納付と健康状態の告知をしなくてはなりません。
面倒な手続きかと思われるかもしれませんが、失効してしまった保険は、復活させた方が一般的にはトクになります。
貯蓄性のある生命保険の特徴
お金を貯めたい方は貯蓄性を
貯蓄性の生命保険のメリット
次に掛け捨て保険に対比する「貯蓄性」の保険について見てみましょう。
貯蓄性保険の代表的なものといえば、「養老保険」、「終身保険」、「学資保険」、「個人年金保険」などがあります。
この中で一生涯の死亡保障がある保険といえば、終身保険だけです。
終身保険は、かつては加入したら契約した保険金が一生涯変わらずに保障される、という保険が一般的でした。
ところが保険料の運用のいかんによっては保障額が増減する(契約した死亡保険金は保証される)変額終身保険という保険が出現しました。
さらに、運用して得た利益を積み増していく積立利率変動型終身保険という、保険も登場しました。
終身保険の最大の特徴は、被保険者の一生涯にわたって死亡に対して保険金が保障されるということです。
ですので、被保険者の死亡によって死亡保険金受け取り指定人には、確実にお金(保険金)を渡すことができます。
これが、満期のある定期保険だと、保険が有効なうちに被保険者が死亡すれば目的を果たせますが、満期以降は果たすことはできません。
終身保険のメリット
@死亡保障がある。
A途中で保険料支払いが困難になったとき、解約返戻金の中から保険料を自動的に立て替えて、保険を有効にする(自動振替貸付)。
B何か緊急に資金が必要なとき、その時点の解約返戻金の90%の範囲内で借入することができる。
C保険料を支払い終わって時点以降、一部分または全部など任意の全額を解約して、解約返戻金を老後の生活に役立てることもできる。死亡保障を得ながら貯蓄ができる。
終身保険の中の積立利率変動型終身保険の保険料を示して、上記の定期保険と比較してみましょう。
性別・年齢 | 男性・30歳 |
---|---|
保険種類・満期 | 積立利率変動型終身保険・65歳払済 |
保険金 | 1,000万円 |
月払保険料 |
合計保険料 (65歳時の解約返戻金) |
---|---|
16,520円 |
6,938,400 (7,490,000円) |
定期保険では、【A】のストレート型で、10,790円、【B】の更新型で2,600円ですから、スタート時の保険料は、終身保険である【C】の16,520円よりも少なくて済みます。
しかし、65歳の払込が終わっても一生涯保障が続く【C】の保険に対して、【A】や【B】は両方とも満期以上に長生きしたら、多額の保険料は消えてなくなってしまいますし、途中で払込が困難になったとき、保険が失効してしまうというリスクもあります。
それに対して、【C】では、1,000万円の保障に対して約694万円弱の払込で済み、それをもちろん死亡保障として残してもよいですし、払込終了後の解約返戻金(払い込んだ保険料よりも大きくなっている)から、少しずつ任意の金額を取り崩して、老後の生活に役立てることもできます。
このように生命保険は、目先の保険料が高いか安いかだけで保険の善し悪しを議論するのはよくありません。
生命保険の、家計診断や保険無料相談で簡単に、「保険料が安い掛け捨て保険にしたほうがいいですよ」という、アドバイスをするファイナンシャルプランナーがいますが、慎重に判断すべきです。
貯蓄性保険を掛け捨て保険に乗り換えさせるということは、貯蓄性保険の積み立てた権利と将来の貯蓄の権利を捨てさせることになるのです。
もっと問題なのは、定期保険など掛け捨て保険へ乗り換えを勧めておきながら、「一生涯の保障」についてはそのまま維持させようとする場合です。
それが、保険料を支払う本人にとって将来どんなに大きな損失になるか、専門家のアドバイスだと信じてしまうから恐ろしいのです。
また、一度掛け捨て保険に乗り換えてしまうと、再度貯蓄性保険に切り替えようと思ったとき、それまでの年月の経過によって、保険料がその年齢分アップしてしまいます。さらに掛け捨ての保険で済ませている間に、病気などの健康上の問題が発生したら、新たな保険に入れない可能性も出てきます。
保険料が安いから、掛け捨てがいいという判断は間違っています。それぞれの保険の特徴を理解し、自分の目的をはっきりさせてから掛け捨てか貯蓄性か決めることが大切です。