法人税基本通達 保険料の取り扱い
特定の時期に解約することで高率な返戻金を受け取れる一部の生命保険について、国税庁は新たな取り扱いを定めた法人税基本通達を2019年6月下旬に公表しました。
通達の内容を解説した国税庁のFAQの一部を抜粋してご紹介します。
なお、本ページで出てくる、「法人税基本通達」の内容は以下のとおりです。
法人税基本通達9−3−4(養老保険に係る保険料)
法人が、自己を契約者とし、役員又は使用人(これらの者の親族を含む。)を被保険者とする養老保険(被保険者の死亡又は生存を保険事故とする生命保険をいい、特約が付されているものを含むが、9−3−6に定める定期付養老保険等を含まない。以下9−3−7の2までにおいて同じ。)に加入してその保険料(令第135条《確定給付企業年金等の掛金等の損金算入》の規定の適用があるものを除く。以下9−3−4において同じ。)を支払った場合には、その支払った保険料の額(特約に係る保険料の額を除く。)については、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次により取り扱うものとする。
(1) 死亡保険金(被保険者が死亡した場合に支払われる保険金をいう。以下9−3−4において同じ。)及び生存保険金(被保険者が保険期間の満了の日その他一定の時期に生存している場合に支払われる保険金をいう。以下9−3−4において同じ。)の受取人が当該法人である場合 その支払った保険料の額は、保険事故の発生又は保険契約の解除若しくは失効により当該保険契約が終了する時までは資産に計上するものとする。
(2) 死亡保険金及び生存保険金の受取人が被保険者又はその遺族である場合 その支払った保険料の額は、当該役員又は使用人に対する給与とする。
(3) 死亡保険金の受取人が被保険者の遺族で、生存保険金の受取人が当該法人である場合 その支払った保険料の額のうち、その2分の1に相当する金額は(1)により資産に計上し、残額は期間の経過に応じて損金の額に算入する。
ただし、役員又は部課長その他特定の使用人(これらの者の親族を含む。)のみを被保険者としている場合には、当該残額は、当該役員又は使用人に対する給与とする。
法人税基本通達9−3−5(定期保険及び第三分野保険に係る保険料)
法人が、自己を契約者とし、役員又は使用人(これらの者の親族を含む。)を被保険者とする定期保険(一定期間内における被保険者の死亡を保険事故とする生命保険をいい、特約が付されているものを含む。)又は第三分野保険(保険業法第3条第4項第2号《免許》に掲げる保険(これに類するものを含む。)をいい、特約が付されているものを含む。
以下9−3−7の2までにおいて同じ。)に加入してその保険料を支払った場合には、その支払った保険料の額(特約に係る保険料の額を除く。以下9−3−5の2までにおいて同じ。)については、9−3−5の2《定期保険等の保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合の取扱い》の適用を受けるものを除き、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次により取り扱うものとする。(昭55年直法2−15「十三」により追加、昭59年直法2−3「五」、令元年課法2−13により改正)
(1) 保険金又は給付金の受取人が当該法人である場合 その支払った保険料の額は、原則として、期間の経過に応じて損金の額に算入する。
(2) 保険金又は給付金の受取人が被保険者又はその遺族である場合 その支払った保険料の額は、原則として、期間の経過に応じて損金の額に算入する。
ただし、役員又は部課長その他特定の使用人(これらの者の親族を含む。)のみを被保険者としている場合には、当該保険料の額は、当該役員又は使用人に対する給与とする。
(注)
1 保険期間が終身である第三分野保険については、保険期間の開始の日から被保険者の年齢が116歳に達する日までを計算上の保険期間とする。
2 (1)及び(2)前段の取扱いについては、法人が、保険期間を通じて解約返戻金相当額のない定期保険又は第三分野保険(ごく少額の払戻金のある契約を含み、保険料の払込期間が保険期間より短いものに限る。
以下9−3−5において「解約返戻金相当額のない短期払の定期保険又は第三分野保険」という。)に加入した場合において、当該事業年度に支払った保険料の額(一の被保険者につき2以上の解約返戻金相当額のない短期払の定期保険又は第三分野保険に加入している場合にはそれぞれについて支払った保険料の額の合計額)が30万円以下であるものについて、その支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときには、これを認める。
法人税基本通達9−3−5の2(定期保険等の保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合の取扱い)
法人が、自己を契約者とし、役員又は使用人(これらの者の親族を含む。)を被保険者とする保険期間が3年以上の定期保険又は第三分野保険(以下9−3−5の2において「定期保険等」という。)で最高解約返戻率が50%を超えるものに加入して、その保険料を支払った場合には、当期分支払保険料の額については、次表に定める区分に応じ、それぞれ次により取り扱うものとする。
ただし、これらの保険のうち、最高解約返戻率が70%以下で、かつ、年換算保険料相当額(一の被保険者につき2以上の定期保険等に加入している場合にはそれぞれの年換算保険料相当額の合計額)が30万円以下の保険に係る保険料を支払った場合については、9−3−5の例によるものとする。
(1) 当該事業年度に次表の資産計上期間がある場合には、当期分支払保険料の額のうち、次表の資産計上額の欄に掲げる金額(当期分支払保険料の額に相当する額を限度とする。)は資産に計上し、残額は損金の額に算入する。
(注) 当該事業年度の中途で次表の資産計上期間が終了する場合には、次表の資産計上額については、当期分支払保険料の額を当該事業年度の月数で除して当該事業年度に含まれる資産計上期間の月数(1月未満の端数がある場合には、その端数を切り捨てる。)を乗じて計算した金額により計算する。
また、当該事業年度の中途で次表の資産計上額の欄の「保険期間の開始の日から、10年を経過する日」が到来する場合の資産計上額についても、同様とする。
(2) 当該事業年度に次表の資産計上期間がない場合(当該事業年度に次表の取崩期間がある場合を除く。)には、当期分支払保険料の額は、損金の額に算入する。
(3) 当該事業年度に次表の取崩期間がある場合には、当期分支払保険料の額((1)により資産に計上することとなる金額を除く。)を損金の額に算入する。
また、(1)により資産に計上した金額の累積額を取崩期間(当該取崩期間に1月未満の端数がある場合には、その端数を切り上げる。)の経過に応じて均等に取り崩した金額のうち、当該事業年度に対応する金額を損金の額に算入する。
区分 | 資産計上期間 | 資産計上額 | 取崩期間 |
---|---|---|---|
最高解約返戻率50%超70%以下 | 保険期間の開始の日から、当該保険期間の100分の40相当期間を経過する日まで | 当期分支払保険料の額に100分の40を乗じて計算した金額 | 保険期間の100分の75相当期間経過後から、保険期間の終了の日まで |
最高解約返戻率70%超85%以下 | 同上 |
当期分支払保険料の額に100分の60を乗じて計算した金額 | 同上 |
最高解約返戻率85%超 |
保険期間の開始の日から、最高解約返戻率となる期間(当該期間経過後の各期間において、その期間における解約返戻金相当額からその直前の期間における解約返戻金相当額を控除した金額を年換算保険料相当額で除した割合が100分の70を超える期間がある場合には、その超えることとなる期間)の終了の日まで |
当期分支払保険料の額に最高解約返戻率の100分の70(保険期間の開始の日から、10年を経過する日までは、100分の90)を乗じて計算した金額 | 解約返戻金相当額が最も高い金額となる期間(資産計上期間がこの表の資産計上期間の欄に掲げる(注)に該当する場合には、当該(注)による資産計上期間)経過後から、保険期間の終了の日まで |
(注)1 「最高解約返戻率」、「当期分支払保険料の額」、「年換算保険料相当額」及び「保険期間」とは、それぞれ次のものをいう。
イ 最高解約返戻率とは、その保険の保険期間を通じて解約返戻率(保険契約時において契約者に示された解約返戻金相当額について、それを受けることとなるまでの間に支払うこととなる保険料の額の合計額で除した割合)が最も高い割合となる期間におけるその割合をいう。
ロ 当期分支払保険料の額とは、その支払った保険料の額のうち当該事業年度に対応する部分の金額をいう。
ハ 年換算保険料相当額とは、その保険の保険料の総額を保険期間の年数で除した金額をいう。
ニ 保険期間とは、保険契約に定められている契約日から満了日までをいい、当該保険期間の開始の日以後1年ごとに区分した各期間で構成されているものとして本文の取扱いを適用する。
2 保険期間が終身である第三分野保険については、保険期間の開始の日から被保険者の年齢が116歳に達する日までを計算上の保険期間とする。
3 表の資産計上期間の欄の「最高解約返戻率となる期間」及び「100分の70を超える期間」並びに取崩期間の欄の「解約返戻金相当額が最も高い金額となる期間」が複数ある場合には、いずれもその最も遅い期間がそれぞれの期間となることに留意する。
4 一定期間分の保険料の額の前払をした場合には、その全額を資産に計上し、資産に計上した金額のうち当該事業年度に対応する部分の金額について、本文の取扱いによることに留意する。
5 本文の取扱いは、保険契約時の契約内容に基づいて適用するのであるが、その契約内容の変更があった場合、保険期間のうち当該変更以後の期間においては、変更後の契約内容に基づいて9−3−4から9−3−6の2の取扱いを適用する。
なお、その契約内容の変更に伴い、責任準備金相当額の過不足の精算を行う場合には、その変更後の契約内容に基づいて計算した資産計上額の累積額と既往の資産計上額の累積額との差額について調整を行うことに留意する。
6 保険金又は給付金の受取人が被保険者又はその遺族である場合であって、役員又は部課長その他特定の使用人(これらの者の親族を含む。)のみを被保険者としているときには、本文の取扱いの適用はなく、9−3−5の(2)の例により、その支払った保険料の額は、当該役員又は使用人に対する給与となる。
法人税基本通達9−3−6(定期付養老保険等に係る保険料)
法人が、自己を契約者とし、役員又は使用人(これらの者の親族を含む。)を被保険者とする定期付養老保険等(養老保険に定期保険又は第三分野保険を付したものをいう。
以下9−3−7までにおいて同じ。)に加入してその保険料を支払った場合には、その支払った保険料の額(特約に係る保険料の額を除く。)については、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次により取り扱うものとする。
(1) 当該保険料の額が生命保険証券等において養老保険に係る保険料の額と定期保険又は第三分野保険に係る保険料の額とに区分されている場合 それぞれの保険料の額について9−3−4、9−3−5又は9−3−5の2の例による。
(2) (1)以外の場合 その保険料の額について9−3−4の例による。
法人税基本通達9−3−7(保険契約の転換をした場合)
法人がいわゆる契約転換制度によりその加入している養老保険、定期保険、第三分野保険又は定期付養老保険等を他の養老保険、定期保険、第三分野保険又は定期付養老保険等(以下9−3−7において「転換後契約」という。)に転換した場合には、資産に計上している保険料の額(以下9−3−7において「資産計上額」という。)のうち、転換後契約の責任準備金に充当される部分の金額(以下9−3−7において「充当額」という。)を超える部分の金額をその転換をした日の属する事業年度の損金の額に算入することができるものとする。
この場合において、資産計上額のうち充当額に相当する部分の金額については、その転換のあった日に保険料の一時払いをしたものとして、転換後契約の内容に応じて9−3−4から9−3−6の2までの例(ただし、9−3−5の2の表の資産計上期間の欄の(注)を除く。)による。
適用時期
適用時期はいつから?
改正後の法人税基本通達及びの取り扱いは、令和元7月8日以後の契約に係る定期保険及び第三分野保険の保険料について適用されますので、同日前の契約に遡って改正後の取り扱いが適用されることはありません。
また、法人税基本通達9−3−5の注2に定める解約返戻金相当額のない短期払の定期保険又は第三分野保険の保険料については、令和元年10月8日以後の契約に係るものについて、改正後の取り扱いが適用されますので、同日前に遡って改正後の取り扱いが適用されることはありません。
当期分支払保険料の額
当期分支払保険料の額はどのように計算するの?
Q
法人税基本通達9−3−5の2では、「当期分支払保険料の額」について、一定額を資産に計上し、あるいは損金の額に算入するとされていますが、この「当期分支払保険料の額」はどのように計算するのでしょうか?
また、保険料を年払としている場合には、法人税基本通達2−2−14(短期前払費用)により損金算入した金額を当期分支払保険料の額とすることは認められるのでしょうか?
A
「当期分支払保険料の額」とは、その支払った保険料の額のうち当該事業年度に対応する部分の金額をいいます。
たとえば、いわゆる前納制度を利用して前納金を支払った場合や保険料を短期払いした場合など、一定期間分の保険料の額の前払いをしたときには、その全額を資産に計上し、資産に計上した金額のうち当該事業年度に対応する部分の金額が、当期分支払保険料の額として法人税基本通達9−3−5の2の本文の取り扱いによることとなります。
また、法人税基本通達2−2−14により、支払日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合、(例えば保険料を年払いとしている場合)において、その支払額に相当する金額を継続して支払日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、その金額を当期分支払保険料の額とすることは認められます。
解約返戻率と解約返戻金相当額
解約返戻率はどのように計算するの?
Q
いわゆる前納制度を利用して前納金を支払った場合や、保険料を短期払込とした場合、解約返戻率はどのように計算するのでしょうか?
A
いわゆる前納制度を利用して前納金を支払った場合には、各期間の保険料として充当されることとなる部分の額の合計額を分母とし、その合計額に係る解約返戻金相当額を分子として解約返戻率を計算することとなります。
一方で、保険料を短期払込とした場合には、各期間までに実際に支払うこととなる短期払込の保険料の額の合計額を分母とし、その合計額に係る解約返戻金相当額を分子として解約返戻率を計算することとなります。
また、最高解約返戻率が85%超の区分となる場合の資産計上期間の判定における解約返戻金相当額についても同様に計算することになります。
年換算保険料が30万円以下の場合
年換算保険料が30万円以下かどうかの判定
Q
年換算保険料が30万円以下かどうかの判定はどのようにするの?
A
年換算保険料相当額が30万円以下か否かは、保険会社やそれぞれの保険契約への加入時期の違いにかかわらず、例えば代表取締役を被保険者として、その法人が加入している全ての定期保険等にかかる年換算保険料相当額の合計額で判定することとなります。
その判定に際しては、特に次の点に留意する必要があります。
@合計額に含めるのは、保険期間が3年以上の定期保険又は第三分野保険で最高解約返戻率が50%超70%以下のものに係る年換算保険料相当額となります。
A事業年度の途中で上記@の定期保険等の追加加入又は解約等をした場合の取り扱いは次のとおりです。
最初に加入した定期保険等に係る年換算保険料相当額が30万円以下で、当期に追加加入した定期保険等に係る年換算保険料相当額を合計した金額が30万円超となる場合には、最初に加入した定期保険等に係る当期分支払保険料の額のうち、その追加加入以後の期間に対応する部分の金額については、法人税基本通達9−3−5の2の取り扱いによることになります。
(ただし、経理事務が煩雑となるため、追加加入した日を含む事業年度に係る当期分支払保険料の額の全額について法人税基本通達9−3−5の2の取り扱いによることとしている場合には、それでも差し支えありません。)
反対に、2つの定期保険等に加入している場合で、事業年度の途中に一方の定期保険等を解約等したことにより、年換算保険料相当額の合計額が30万円以下となるときには、他の定期保険等に係る当期分支払保険料の額のうちその解約等以後の期間に対応する部分の金額については、法人税基本通達9−3−5の2の取扱いの適用はありません。
(ただし、経理事務が煩雑となるため、解約等した日を含む事業年度に係る当期分支払保険料の額の全額について法人税基本通達9−3−5の2の取扱いによらないこととしている場合には、それでも差し支えありません。)
この場合、既往の資産計上額の累積額については、保険期間の100分の75相当期間経過後から、保険期間の終了の日までの取崩期間の経過に応じて取り崩すこととなります。
B改正通達の適用日前に契約した定期保険等に係る年換算保険料相当額は判定に含める必要はありません。
最高解約返戻率が85%超となる場合の資産計上期間
最高解約返戻率が85%超となる場合の資産計上期間の判定は?
Q
最高解約返戻率が85%超の区分となる場合の資産計上期間は、どのように判定するのでしょうか?
特に法人税基本通達9−3−5の2の表中の資産計上期間の欄の(注)は、どのような場面で適用されるのでしょうか?
A
最高解約返戻率が85%超の区分となる場合の資産計上期間は、原則として、保険期間の開始日から、最高解約返戻率となる期間の終了の日までとなります。
ただし、最高解約返戻率となる期間経過後の期間においても、その支払保険料の中に相当多額の前払部分の保険料が含まれている場合(解約返戻金相当額の対前年増加額を年換算保険料相当額で除した割合が7割を超える場合)には、7割を超える期間の終了の日まで資産計上期間が延長されることとなります。
契約内容の変更
契約内容の変更の場合はどうなるの?
Q
法人税基本通達9−3−5の2(注)5にある「契約内容の変更」とは、どのような変更をいうのでしょうか?
A
解約返戻率の変動を伴う契約内容の変更や保険期間の変更は、原則として「契約内容の変更」にあたり、例えば、次のような変更が該当します。
@払込期間の変更(全期払を短期払に変更する場合)
A特別保険料の変更
B保険料払込免除特約の付加・解約
C保険金額の増額、減額又は契約の一部解約に伴う高額割引率の変更により解約返戻率が変動する場合
D保険期間の延長・短縮
E契約書に記載した年齢の誤りの訂正等により保険料が変動する場合
Q
定期保険等に加入後、「契約内容の変更」があった場合、具体的には、どのような処理を行うのでしょうか?
A
契約後に契約内容の変更があった場合、保険期間のうち当該変更があったとき以後の期間においては、変更後の契約内容に基づいて法人税基本通達9−3−4から9−3−6の2までの取り扱いを適用することとなります。
なお、保険料や保険金額の異動(これに伴い解約返戻率も変動)を伴う契約内容の変更がある場合には、変更前の責任準備金相当額と変更後の契約内容に応じて必要となる責任準備金相当額との過不足を精算を行うのが一般的です。
これにより、責任準備金相当額は、契約当初から変更後の契約内容であったのと同じ額となりますので、税務上の資産計上累積額もこれに合わせた調整を行う必要があります。
具体的には、変更時に精算される責任準備金相当額を損金の額又は益金の額に算入するとともに、契約当初から変更後の契約内容であったとした場合の各期間の解約返戻率を基にその保険期間に係る最高解約返戻率の区分を再判定して契約当初から変更時までの資産計上累積額を計算します。
これと既往の資産計上累積額との差額について、変更時の益金の額又は損金の額に算入することとなります。
この調整により、税務上の資産計上累積額は契約当初から変更後の契約内容であったのと同じ額となります。
この処理は、契約変更時に行うものですので、過去の事業年度に遡って修正申告をする必要はありません。
変更後の各事業年度における当期分支払保険料の額については、上記の新たな最高解約返戻率の区分の応じて取り扱い、上記の調整後の資産計上累積額についても、この新たな区分の応じた取り崩し期間に従って取り崩すこととなります。
また、最高解約返戻率が85%以下の場合で、最高解約返戻率の区分に変更がないときには、資産計上期間や資産計上割合は変わらないことから、必ずしも上記の処理によることなく、責任準備金相当額の精算のみを行う処理も認められます。
解約返戻金相当額のない短期払の定期保険又は第三分野保険
解約返戻金相当額のない短期払の定期保険又は第三分野保険とは?
Q
法人税基本通達9‐3‐5の(1)及び(2)では、支払った保険料の額は、原則として、保険期間の経過に応じて損金の額に算入するとされていますが、同通達の(注)2では、保険料を支払った日の属する事業年度の損金の額に算入することが認められています。
具体的には、どのような場合に(注)2の対象となるのでしょうか?
A.
法人が支払った保険料の額は、原則として、保険期間の経過に応じて損金の額に算入することになります。
しかし、納税者の事務負担に配慮して、法人が保険期間を通じて解約返戻金相当額のない短期払いの定期保険又は第三分野保険に加入した場合において、一の被保険者につき当該事業年度に支払った保険料の額が30万円以下であるものについて、その支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときには、その処理が認められます。
Q
当該事業年度に支払った保険料の額が30万円以下か否かは、どのように判定するのでしょうか?
A.
30万円以下か否かについては、特に次の点に留意する必要があります。
@一の被保険者(例えば、代表取締役:甲)につき、法人税基本通達9‐3‐5の(注)2に定める「解約返戻金相当額のない短期払いの定期保険又は第三分野保険」に複数加入している場合は、保険会社やそれぞれの保険契約への加入時期の違いにかかわらず、そのすべての保険について当該事業年度に支払った保険料の額を合計して判定することとなります。
A事業年度の途中で「解約返戻金相当額のない短期払いの定期保険又は第三分野保険」の追加加入又は解約等をした場合の取り扱いは次のとおりです。
最初に加入した定期保険又は第三分野保険の年払保険料の額が30万円以下で、事業年度の途中で追加加入した定期保険又は第三分野保険について当該事業年度に支払った保険料の額の合計額が30万円超となる場合には、当該事業年度に支払ったいずれの保険料についても、同通達の(注)2の取り扱いは認められず、それぞれの保険期間の経過に応じて損金の額に算入することとなります。
反対に、2つの定期保険又は第三分野保険に加入している場合で、事業年度の途中に一方の保険を解約等したことにより、当該事業年度に支払った保険料の合計額が30万円以下となるときには、当該事業年度に支払った保険料の額を当期の損金の額に算入することができます。
B改正通達の適用日前に契約した「解約返戻金相当額のない短期払いの定期保険又は第三分野保険」にかかる支払保険料の額は判定に含める必要はありません。
保険契約の転換
保険契約の転換の取り扱いは?
Q
いわゆる契約転換制度により、現在加入している養老保険を定期保険又は第三分野保険に転換した場合、転換後契約はどのように取り扱われるのでしょうか?
A.
転換した場合には、養老保険の保険料ついて資産計上した金額のうち、転換後の定期保険又は第三分野保険の責任準備金に充当される部分の金額(充当額)を超える部分の金額を転換日の属する事業年度の損金の額に算入することができます。
その上で、充当額に相当する部分の金額については、転換後の定期保険又は第三分野保険に係る保険料の一時払いをしたものとして、法人税基本通達9‐3‐5及び9‐3‐5の2の例によることとなります。
この充当額(転換価格)については、前納金として扱い転換後契約の応当日に各期間の保険料に充当していく方式(保険料充当方式)と、転換後契約の保険料の一部の一時払いとする方式があります。
いずれの方式であっても転換後契約が定期保険又は第三分野保険である場合には、その充当額(転換価格)の全額を資産に計上し、資産計上した金額のうち転換後の各事業年度に対応する部分の金額が当期分支払保険料の額として法人税基本通達9‐3‐5の2の本文の取り扱いによることとなります。